【論文要約】ベンチプレス中の筋の緊張下時間の分析

読んだ論文を復習のために要約します。本文元も載せてありますので、ご興味のある方はお目通しください。

<題目>レクリエーションレベルのトレーニング経験者におけるベンチプレス中の筋の緊張下時間の分析:系統的レビュー
<著者>Giullio Cé sar Pereira Salustiano Mallen da Silva,Vicente Pinheiro Lima,Andressa Oliveira Barros dos Santos他
<本文>https://docs.nsca-japan.or.jp/ceuquiz/31_3_26-34.pdf

目的

 レクリエーションレベルのトレーニング経験者がベンチプレスを行なっている間の緊張下時間(TUT)の挙動を分析することであった。

結論

 ベンチプレスにおけるTUTの変化は、使用するエクササイズプロトコルや方法によって異なることが示された。コンディショニング活動や筋活動を実施した後に力発揮能力が高まるメカニズムである活動後パフォ-マンス増強(PAPE)を使用したプロトコル、バーベルの形状の違い、ケイデンスの違い、負荷テスト中など、いくつかの条件において、レップ数とTUTに違いがみられた。これら2つの変数が、トレーニング量を定量化する指標として異なっていることを示している。

背景

 TUTは、当該レップの短縮性局面、切り返しの局面、および伸張性局面の持続時間の合計として表すことができる。個別か否かにかかわらず、各局面の持続時間を増加または減少させることによって、TUTを変化させることができる。トレーニング量や負荷を決定する際、TUTはしばしば軽視されがちであるが、TUTの変化により、疲労や筋組織の損傷レベルが変化する可能性がある。

研究レビュー

トレーニング変数 

 80%1RMの負荷を使用して、異なるケイデンスでTUTを分析した。可能なかぎり高速で行なう場合と、動作の伸張性局面と短縮性局面を2秒間で行なうモデルである。著者らが明らかにした結果によると、2つのケイデンス間でTUTに差は認められなかった。これは先行研究とは対照的であるが、レップ数には差がみられた。

トレーニング強度

 8RM、10RM、12RMの異なる強度を用いた負荷テスト実施中のTUTを分析した。Silvaらの研究では、TUTに違いがあることが示された。8RMテストの総TUTは、10RMおよび12RMテストよりも短かった。一方、10RMテストと12RMテストでは、総TUTに差はみられなかった。力–速度曲線によれば、用いる負荷が大きければ大きいほど、抵抗に対抗して速度を上げることはできなくなる。したがって、より多くの
レップを完遂することは難しくなる。これは、より大きな負荷に伴い疲労が生じ、力を発揮する神経筋の能力が損なわれることに起因する。

トレーニング方法

活動後パフォーマンス増強(PARE)

 総TUTは、従来のプロトコルと比較してPAPE条件のほうが長かったが、レップ数に差はみられなかった。セット当たりのTUTは、PAPEでは3セット目だけに差がみられ、TUTの値が高かった。このPAPEに伴うTUTの増加は、筋環境温度の上昇と血流の増加によって説明できる。したがって、TUTがなぜ筋温を上昇させるのかを説明す
るエビデンスはないにもかかわらず、PAPEは温度上昇効果の改善に貢献する可能性がある。

血流制限

 血流制限を用いると、用いない場合に比べ、総TUTの値が大きくなった。これは、カフの素材が生み出す機械的圧迫が張力を生じさせているためと推測される。この処置によって蓄積されたエネルギーは動作スピードを変え、持続時間も変える可能性がある。Wilkらは、カフがきつい(高圧)ほうが、カフの幅が広い(低圧)場合よりも、ピーク速度と平均速度が低下することを観察した。

グリップ幅

 Wilkらは、バーベル上のグリップ幅を変数として、70%1RMを用いてベンチプレスを実施した際のTUT変数を分析したが、グリップ幅を最も狭くした場合と最も広くした場合との結果は類似していた。

可動域

 2つの研究が、ストレートバーとEZバーとを用いてベンチプレスにおけるTUTを分析した。バーベルの違いによる可動域の違いは、レップ数には影響したが、総TUTや負荷の総変位には影響しなかった。

現場への応用

 本稿で示した諸条件から、ベンチプレスエクササイズの処方モデルに従って、TUTの起こりうる挙動を予測することが可能である。最大速度で短縮性筋活動を失敗するまで行なうエクササイズでは、負荷の違いがレップ数とTUTに影響を及ぼす。これらの条件下では、負荷が低いほどTUTが増加すると思われる。このTUTの増加は、血流制限圧がより高い場合やPAPEを伴う場合、また、より遅いケイデンス(短縮性局面の遂行時間に関係なく)でも起きた。対照的に、負荷を1RMの割合により等しく設定した場合には、グリップ幅によりTUTが変化することはなかった。レップ数とTUTの挙動は、同じトレーニングプロトコルにおけるパフォーマンスの違いを示す可能性がある。

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